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パニック障害でも妊娠・出産するために知っておくべきこと
パニック障害を抱えている女性の中には、新しい命を身に授かっている方やこれから授かりたいと思われている方、あるいは授かってしまったという方もいるでしょう。
パニック障害が病気である以上、治療の際に生まれてくる胎児に影響(奇形)がないかという事は、とても心配な事であるはずです。
パニック障害と妊娠
妊娠中におけるパニック障害の発症・悪化率
妊娠中は、ホルモンバランスが妊娠前と大きく変わるため、精神的に不安定になりやすい傾向にあります。
特に初産での妊娠初期にパニック障害を発症する場合が多く、「母親」という意識付けを強いられてしまう事による精神への大きな負担が原因だと考えられています。
しかし、妊娠というのは本来喜ばしい事でありますので、パニック障害を患っていた方が妊娠をキッカケに症状が軽減したという事例もあります。
妊娠自体がパニック障害発病の原因や症状の悪化に必ず繋がるものではありませんが、発病や症状の悪化をする方の方が全体的に見れば多い傾向となっています。
パニック障害でも出産可能か?
パニック障害だからと言って、子供が産めないという事はありません。
健康な方が妊娠すると同様に、胎児に影響を与えないように日々を過ごしていれば、出産は十分に可能です。実際に、パニック障害を患いながら子供を出産した方も、非常に多く居ますので安心してください。
ただし、薬の服用等を含めて妊娠中には控えるべきものがありますので、精神状態等を含めて適切な治療を行う必要があります。
妊娠中のパニック障害の治療について
妊娠中の薬は最低限に
薬は煙草や酒類と同様に、体内では胎児に悪い影響を与える物として扱われます。
しかしパニック障害の場合は妊娠中に薬を絶対にやめなければならないという事はありません。
これは、薬を直ぐに全て辞めてしまうとストレスを過剰に受けてしまう事により、産まれてくる子供がアトピー性皮膚炎等のアレルギー疾患を発症してしまう危険性がある為です。
通院されている精神科の医師と相談し、可能な限り薬を抑える努力をしてみましょう。
妊娠中に薬の使用は禁止ではありませんが、絶対に服用してはいけない精神薬もあります。
「気分安定剤」と呼ばれる炭酸リチウム(商品名:リーマスなど)、バルプロ酸(デパケン)、カルバマゼピン(テグレトール)等は、服用していた妊婦から奇形種(四肢が整っていない・内臓の一部が無い等)の胎児が産まれてきたという報告が幾つも挙げられています。
胎児の器官が作られる妊娠初期(妊娠12週まで)の服用は絶対に避ける必要があります。
気分の安定した場所で過ごす
パニック障害は不安が多い環境では悪化しやすくなります。特に妊娠中では不安定になりがちであるため、人気の多い場所等、ストレスを受けやすい環境から離れ、気分の安定した場所で過ごすようにしましょう。
ストレスの受けやすい環境は、具体的にいうと、電車、バス、飛行機、歯医者や美容室、映画館の、閉鎖的で人口密度が高くなりやすい場所です。決して行ってはならないという事はありませんが、出来る限り避けるようにしましょう。
運動をした方がパニック障害にも胎児にも良い
妊娠中の運動は、激しい運動でない限り行っても構いません。むしろ運動をした方がパニック障害の治療には勿論の事、胎児にも良い影響を及ぼします。
運動をし、全身の血流を良くする事で、パニック障害の症状を緩和させる事が出来ます。また新鮮な酸素や血液を届ける事が出来る為、健康的な子供として産まれてくる確率を大きく上げる事が出来ます。
パニック障害を無理に回復しようとしない
妊娠中だから胎児がいるからといって、パニック障害を無理に改善しようとしないでください。無理をすると回復どころか、逆に悪化する可能性が非常に高いです。
パニック障害は長い時間をかけて、少しずつ回復する必要がある病です。他の病同様に、確実に回復出来るよう、焦らずゆっくりと治療に臨むようにしましょう。
パニック障害者が妊娠すると奇形率が高くなるのか?
パニック障害を患っていて、妊娠した方の多くが心配することが「赤ちゃんの奇形率」ではないかと思います。
パニック障害では投薬による治療が主流となっていますから、パニック発作を抑えるために、薬を手放せない方も多く、このように薬を飲んでいる事が胎児へ影響を及ぼしてしまうのではないか?と考えてしまうでしょう。
パニック障害の投薬治療が胎児へ与える影響
しかしながら、パニック障害の投薬治療が胎児の奇形率を上昇させることはありません。
胎児の体の基礎ができあがる妊娠前期に三環系抗うつ薬を服用していた婦人414名が調査され、薬により先天性奇形が増加しているという事実は見つかりませんでした。
投薬による胎児への影響は数々の研究が行われており、上記の通り、パニック障害に関わらず抗うつ薬を服用した妊婦のケースでも、奇形率の向上は見られなかったと報告されています。
また、生まれた後の赤ちゃんの成長を研究した例もあり、妊娠中に抗うつ薬を服用した妊婦から生まれた子供の成長を3年間の臨床研究を行った結果、運動や行動の発達は正常であったことがわかっています。
正常な妊婦でも胎児の奇形率は2%
パニック障害や鬱病ではない妊婦、すなわち正常に生活できる妊婦から生まれる奇形児の確立は約2%と言われています。これは決して低くはない数値ですが、健康体でもこれだけの奇形児を出産してしまう確立があります。
そして、パニック障害者の出産研究結果でも奇形率に大きな差はありませんでした。