広場恐怖とは?その原因・症状と克服に向けた対処法



パニック障害における広場恐怖(ひろばきょうふ)とは?

パニック障害においては広場恐怖(ひろばきょうふ)という精神医学の専門用語がしばしば使われます。

広場恐怖と言っても「広い場所に恐怖を感じる」という事ではありません。それこそ文字から想像すると閉所恐怖症の逆パターンであるかのように思えてしまいますが、その症状は全く異なります。

それでは広場恐怖とは一体どの様な症状なのでしょうか?

広場恐怖の症状

広場恐怖とは、パニック発作を起こした環境(場面・場所・シチュエーション)に再び遭遇すると、またパニック発作を引き起こしてしまうのではないかと恐れ、その環境を避けようとする症状の事を指します。

避けようとしてしまう環境(場面・場所・シチュエーション)は人それぞれですので一概に特定することはできませんが、パニック障害者全般の傾向としては、“その場から離れられない場面”では広場恐怖を発症させやすいと言われています。

具体的には、飛行機やバス・電車・高速道路・トンネルといった一定時間拘束されてしまう環境から映画館・美容室・床屋・歯医者などの比較的拘束される場所まで様々です。

 

なぜ広場恐怖を引き起こしてしまうのか?

広場恐怖を引き起こす原因となる ”その場から離れられない” という環境は数えきれないほど多くあると思います。

それこそ社会生活や学校生活を日々送っている場合、ほとんどの方が “拘束された環境” で多くの時間を過ごしているはずでしょう。

広場恐怖を引き起こしてしまうのは(もちろん、パニック発作自体への恐怖心もありますが)”その場から離れられない環境” それ自体が主の原因ではなく、「そこから逃げ出せない状態でパニック発作が起きたらどうしよう」という思考も強く影響しています。

例えば、

  • 「ここでパニック発作が起きたら周りの人に迷惑をかける」
  • 「パニック発作で倒れたら恥ずかしい」
  • 「誰も助けてくれない(と思うから)から怖い」

この様な思考です。

ですから、例えば過去に電車に乗っていてパニック発作を起こしたケースでは、「電車に乗ると発作が起きそうだ」と脳が誤認識し予期不安を与えます。

そして、「電車の中で倒れたら恥ずかしいなあ・迷惑かけてしまうなあ」と思い込み、「じゃあ電車に乗るのは止めよう」と自分の中で電車=パニック発作と結び付け、原因と考えられるものを回避(=広場恐怖)していくのです。

この様な思考回路が“ ”広場恐怖” を引き起こしてしまうのです。

広場恐怖の問題点

パニック障害における広場恐怖の問題点は “パニック発作の起きた場所=またパニック発作が起きる” と脳が認識してしまうところにあります。

医学的な話ですが、特定の環境とパニック発作の因果関係はほとんど無いとされています。

つまり、電車に乗ったからパニック発作が起きるのではなく、電車に乗ったらパニック発作が起きるのではないだろうか?という一種の不安がパニック発作を誘発しているとも言えるのです。

ですから、この様に環境(場面・場所・シチュエーション)とパニック発作を結び付けてしまう思考回路を変えられなければ、パニック障害(広場恐怖を含む)を克服・改善していく事は難しいのです。

 

広場恐怖は拡大していく

広場恐怖の問題点はこれだけではありません。

何かひとつだけ、例えば、飛行機に乗るとパニック発作が起きるといった苦手な環境が一つ程度ならまだ広場恐怖の症状は軽いと言えるでしょう。

しかし、広場恐怖の問題点は苦手な環境(場面・場所・シチュエーション)が徐々に増えて行くというところにあります。

その原因の根底にあるのがこれまで解説してきた思考です。

パニック障害の具体的な症状でも解説しましたが、パニック障害では広場恐怖を発症する以前に予期不安が発生します。つまりは、予期不安の延長線上に広場恐怖があるのです。

予期不安が様々な方向に向いていくと、広場恐怖の範囲も広がっていきます。

広場恐怖が拡大していく過程

具体的にどの様に拡大していくかというと、基本的に思考の変化によって拡大すると言えるでしょう。

パニック発作を関連付けてしまう環境がひとつだけだった場合、やがては今まで全く大丈夫だった環境(場面・場所・シチュエーション)でも「パニック発作が起きてしまうのではないだろうか?」という予期不安から、パニック発作が起きるようになる事がしばしばあります。

そしてひとつ増えるとパニック発作への恐怖心が増し、様々な環境と関連付されて、それらの場所を避ける様になっていき、どこへ行ってもパニック発作の恐怖に怯えるため、最悪のケースでは家から1歩も外に出られないといった状況まで発展します。

パニック障害では、このようなケースは珍しくありません。

パニック発作に対する非常に強い恐怖心から徐々に ”1人では何も出来ない” “今まで出来た事ができない” といった状態になり、出来ない自分に対して自己嫌悪に陥ってしまいます。

これは負のスパイラルであり、パニック障害を克服・改善させていく過程としては望ましくない展開です。

様々な環境に対して恐怖心を持ってしまう事はパニック障害の症状のひとつであり、これはパニック障害者自身の甘えや怠慢ではありません。

しかし、自己嫌悪に陥ってしまう事は直接的にパニック障害と関係のない事ですから、『何もできない自分を責める⇒自己嫌悪⇒出来ない事がまたひとつ増える』という流れは、投薬や精神療法を含めたパニック障害の治療を正確に行っていても、その治療経過にさえ悪影響を及ぼしてしまいます。

そうならない為にも、パニック障害を知ることが大切です(これはパニック障害克服ABCの強い要望です)。

パニック障害に対する正しい知識を持ち、そしてパニック障害であることを受け入れることが非常に大切なのです。

[関連] ≫パニック障害を知る

広場恐怖への対処法と克服法

広場恐怖への対処法はパニック障害への対処法と言えます。

広場恐怖への対処法としては、認知行動療法で有名な暴露療法が効果的です。

すなわち、苦手な環境(場面・場所・シチュエーション)にあえてチャレンジして、少しずつパニック発作に対する恐怖心を取り除くというやり方になります。

具体的なやり方については下記の記事を参照してください。

[参照先] ≫暴露療法のやり方

 

広場恐怖を克服するための暴露療法

本記事の”広場恐怖の問題点”でも解説しましたが、広場恐怖では ”環境とパニック発作を関連付けてしまう事” が問題点だと説明しました。そして、パニック発作が起きる事と場所・場面などの環境は因果関係のない事も説明しました。

つまり、「○○に行くとパニック発作が起きるのではないか?」という思考は脳の誤作動であり、これはパニック障害の代表的な症状で、これを投薬や精神療法で治療しているわけです。

極論を言ってしまえば、予期不安や広場恐怖さえなくなれば、ほぼパニック障害は克服できたと言っても過言ではないと考えています。

この内、広場恐怖の克服に非常に効果的なのが暴露療法になります。

暴露療法は医者に行かなくとも、個人で行う事ができる認知行動療法です。しかし、暴露療法の記事を読んで頂ければわかる通り、苦手な場面にあえて挑むやり方になりますので、基本的な前提条件として、外出できるまでに症状が改善されていることが必要になります。

また、もし個人で暴露療法を行う場合、やり初めはご家族の方などのサポートがあると進めやすいでしょう。

暴露療法を正しく行えば、広場恐怖を克服する事は可能ですので、これまで投薬治療などを長期間進めていたが、根本的なパニック発作を改善できていない方は積極的に取り組むことを強くおすすめします。

[参照先] ≫暴露療法のやり方