自律訓練法の効果と実施手順・注意点

今回ご紹介する『自立訓練法』は、6つの手順 (公式) に沿って体をリラックスさせる事で、不安や恐怖感を和らげ、緊張を解していく治療法です。

心療内科などの医療機関でも取り入れられる治療法であり、パニック障害やPTSDを代表とする不安障害を含めた精神疾患全般の症状改善に用いられています。その他にも、うつ病・産業・教育・スポーツなど幅広い分野で用いられているのも特徴的です。

パニック障害に限定して言えば、この自律訓練法は、他の治療法には無い大きなメリットとして、

  • 特別な技能が無くても直ぐに始められる
  • 5分前後の少ない時間で行うことができる
  • 隙間時間に行うことができる

などが挙げられ、自宅療養と合わせて実施する事が可能です。

これより自律訓練法の効果ややり方について解説していきますが、特定の疾患をお持ちの方には注意していただきたい点もありますので、必ず最後までご一読ください。

1.自立訓練法とは

自立訓練法とは1932年にドイツの精神医学者J・H・シュルツ教授が考案した、心身のリラックスを目的とした自己催眠法の一種です。

楽園の地で過ごすように気持ちを楽にし、体に神経を集中する事で、

  • 硬直した筋肉と血管を柔らかくする
  • ストレスの解消
  • 心を安定させる

この様な効果が期待できます。

自立訓練法は事前準備の後、これから説明する1から6までの公式(ステップ)を順番に行っていき、最後に『消去法』と呼ばれる行動を行って終わります。

個人差はあるものの、この自律訓練法を1日に2~3回ほど繰り返す事によって、パニック障害の主な症状である

  • 眩暈(めまい)
  • 動悸
  • 息苦しさ
  • 過呼吸

などのパニック発作を軽減させる効果が期待できます。

2.自立訓練法を実施する前の準備

それでは、自立訓練法の実践方法について説明していきます。

2-1. まずはリラックスできる環境を整えましょう

自律訓練法を実施するにあたって、リラックスできる体勢をとりましょう。具体的には、

  • 布団の上に仰向けになる
  • 椅子に深く腰掛ける

上記のような体勢で全身の力を抜き、楽な姿勢になりましょう。ベルトや身を締め付ける金具、ネックレス・指輪・メガネなどの装飾品は全て外しましょう。布団に横たわる場合は体の直ぐ横に手を置き、椅子に座る場合は手を膝の上に置きます。

椅子に座って自立訓練法を行う場合は、足裏を床にピッタリと合わせましょう。足の裏が床から浮いていると、気持ちが不安定になり、リラックスしにくくなってしまいます。

2-2. 気持ちを落ち着かせる空間を作ることも大切です

テレビやラジオ等を全て消し、空間を静かにしましょう。(絶対に無音にする必要はありません。音が無い空間に苛立ちや不安を感じてしまう人はテレビ等を付けていても構いませんが、音量はごくわずかに聞こえる程度に抑えましょう)。

また、部屋はなるべく暗くして落ち着ける空間を作ってください。(寝室で寝る時のような状況を想像すると良いでしょう)

3.自律訓練法のやり方

それでは自立訓練法をはじめていきましょう。

自律訓練法では、第1公式から第6公式までを順番に行っていきます。特別むずかしいことは全くありません。決まった言葉を心の中で唱え、自己暗示していくのが自律訓練法です。

STEP-0. 背景公式:事前準備

『2.自立訓練法を実施する前の準備』 でご説明した 事前準備 は済んでいますか?リラックスできる環境を作れたら、全身の力を抜き、深呼吸を2,3回行います。気持ちが安定してきたと感じたら、軽く目を閉じます。

STEP-1. 第1公式(四肢の重感):手足の重みを感じる

準備が全て整ったら、いよいよ「公式」と呼ばれる手順を順番に行っていきます。

先ずは第1ステップとして、手足の重みを感じましょう。力を入れず、リラックスした状態になると、体の部位の微妙な重さを意識出来るようになります。心の中で『右手が重たい』と暗示し、なんとなく右手が重くなる感覚をつかんでみてください。

同じような念じ方で、右手⇒左手⇒右足⇒左足の順番で行っていきましょう。

STEP-2. 第2公式(四肢の温感):手足の温かさを感じる

次は、手足の温かさを感じましょう。心身を楽にしていると、手足は熱を帯びてきます。暗示の仕方は第1公式と同様です。 ※例)「だんだん右手が温かくなる」

STEP-3. 第3公式(心臓調整):ゆるやかな心臓の鼓動を感じる

次に、心臓の鼓動に耳を傾けましょう。リラックス状態ですと心臓は非常にゆっくりと波打っています。自らの命の鼓動を感じ取りながら、更に体の力を抜いていきます。

STEP-4. 第4公式(呼吸調整):楽な呼吸を行う

深く、ゆっくりとした呼吸を行えていると、心身がリラックス状態になっています。深く意識はせずに、ただ楽に呼吸をしましょう。全身の酸素と二酸化炭素を入れ替えるように、深く、ゆっくりと息を吸い、吐き出します。

STEP-5. 第5公式(腹部温感):腹部に温かさを感じる

体勢をそのままにして、腹部の温度を感じましょう。リラックス状態になっていると、腹部は自然に熱を帯びてきます。

STEP-6. 第6公式(額涼感):額に心地良い涼しさを感じる

額に心地の良い涼しさを感じられると、体は十分にリラックスしています。高原で風を受けているような心地になって、更に深く心身を安定させていきます。

 

ここまでのポイント

第1公式〜第6公式までを長くとも5分程度で終わる様に進めてみてください。「できなかった」と感じても悲観せずに終わりにしてください。ひとつの訓練ですので、自律訓練法を何度か実施するにつれて、できなかった事ができる様になっていきます。

 

STEP-7. 消去法

全ての手順を踏んだ後(途中までの手順でも構いません)は、『消去法』という動作をして、自己催眠状態から醒めましょう。布団の上で自立訓練法を行った場合は、消去法を行わずにそのまま眠ってしまっても構いません。

消去法のやり方はとても簡単です。手を握ったり離したりを数回行い、両手を組んで大きく伸びをした後で、首や肩をよく回す動作を行い、最後に深呼吸をします。

4.自立訓練法の注意点

自立訓練法は行う時間が他の治療法に比べて最も少なく、何処でも手軽に行えるのが最大のメリットですが、一部の方には手順の中に、危険を伴う物があります。

以下のリストに該当される方は、患われている疾患や病気を発病したり、悪化させてしまう危険がありますので、この治療法で行う上では、記載しております手順は決して行わないようにしてください。

1.胃が弱い方 / 十二指腸潰を疾患している場合

第5公式(腹部温感練習)は行わないようにしてください。胃腸に痛みを感じたり病状を悪化させる危険があります。

2.妊娠中の場合

第5公式(腹部温感練習)は行わないでください。妊娠中毒症 を引き起こす危険があります。

3.心臓が弱い場合

第3公式 ( 心臓調整 ) は行わないでください。心臓に負担をかけてしまいます。

4.喘息や呼吸器の病気を経験されている場合

第4公式(呼吸調整)は行わないでください。呼吸困難になったり喘息を引き起こす危険があります。

5.頭部の疾患、又はてんかんを持っている場合

第6公式(額部涼感練習)は行わないようにしてください。不安や緊張感を高めてしまいます。

6.心筋梗塞・低血糖状態の場合 / 迫害妄想・迫害妄想のある方

全ての公式を行ってはいけません。

 

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