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暴露療法によるパニック障害の治療
暴露療法(エクスポージャー療法)はパニック障害者がその病気の克服を目的に治療を受ける「有名な治療法」です。暴露療法自体は認知行動療法のひとつであり、パニック障害を改善させる大きな効果が期待できます。
ここでは、パニック障害の克服に向けて「暴露療法を自分で行う為」に、この治療法の効果や進め方・やり方を解説していきます。
暴露療法とは?
暴露療法とは別名“エクスポージャー療法(Exposure Therapy)”と呼ばれ、パニック障害の治療という観点では「暴露療法」という呼び方がメジャーかもしれません。エクスポージャー(Exposure)とは日本語訳で“暴露”や“身をさらす”といった意味がありますので、暴露療法との関連性があるのもお分かりの通りです。
暴露療法とは
自分が恐怖・不安に思っている状況や場所、環境に対して敢えて自ら足を踏み入れ身をさらす方法を行います。
そもそも暴露療法はPTDS(外傷後ストレス障害)の治療法に用いられてきましたが、不安障害や恐怖症などの効果も認められパニック障害の治療でも取り入れられるようになりました。
パニック障害の症状でもご説明しましたが、パニック障害の発症背景は「パニック発作」・「予期不安」・「広場恐怖」ですから、問題となるのは、あの場所に行くと、あの環境になるとパニック発作が出てしまうのではないか?という特定の条件とパニック発作の関連付けです。
暴露療法を行う事のメリット
暴露療法を行うことのメリットは非常に多くの効果改善が期待できるという事です。また、暴露療法という文字からとても難しい治療法と誤認してしまいがちですが、やるべき事は単純ですので是非積極的に取り組んで頂きたいと思います。
暴露療法の具体的な効果
まず、この暴露療法を行うことによって、苦手な場所や環境に自らの意思でチャレンジする必要がありますので、初めてケースやまだ初期段階レベルでは非常に恐怖心が伴いますが、一方でこういった環境にチャレンジしてパニック発作などをうまく乗り越える実績を作ると非常に大きな自信につながります。
また、不安や恐怖といった体験を繰り返し行うようになりますので、このような不安や恐怖に対する意識が減り、慣れることが可能になります。そして、このような不安や恐怖に直面するとどうしてもパニック発作が出てしまいますが、暴露療法を行う中でパニック発作は起きるがとても短い時間である事を認識する事ができ、また、発作自体は自然と治まるものだと体感する事ができますので、パニック発作への恐怖心を徐々に減らすことができます。
暴露療法のやり方/方法
暴露療法のやり方はとても簡単であり、かつ単純です。具体的な方法については後でご説明いたしますが、あなたがやるべき事は、あなたが苦手とする(パニック発作が起きた)場所・環境に行くのみです。例えば、電車に乗ることがパニック発作を連想し恐怖と感じるのであれば、あえて電車に乗ることを行うというやり方です。
その際、パニック発作を起こさないための必需品(例えば…薬・飴・紙袋・ハンカチなど)は携帯しません。いわば、もっとも無防備な状態で苦手な環境に挑みます。
まず初めに、暴露療法を行う環境(不安や恐怖の伴う場所)を決めなければなりません。
あなたはパニック障害に疾患して、恐らくは苦手となってしまった場所や環境(シチュエーション)がいくつかあると思います。それら場面を苦手な順にランク付けしてみてください。まったくダメな環境もあれば、なんとか行けるだろう場面まであると思います。
初めて暴露療法を行う場合はランク付けした最も簡単な場面を目標に設定してください。
まず簡単な場面を克服して、徐々に難しい場面へチャレンジしていく方がモチベーションを保ちやすいでしょう。また、とても恐怖の強い場面をクリアできると、それより恐怖心が少ない場面は比較的かんたんに克服できる傾向があります。
暴露療法を行っていく中で、不安と恐怖の場面・環境にチャレンジしていく訳ですからこの暴露療法を実施する前から、自分がどの様な状態になってしまうのかある程度予測がつくと思います。これをまず記録してから行ってください。そして、暴露療法実施後、実際に起きた症状や状態を記録し比較してみます。
暴露療法実施前のあなたの予測と実施後の結果はどのような関係になっていたでしょうか?一般的なケースでは予測よりも結果の方が不安度合が低くなります。
暴露療法を実施する上で大切な条件となるのが「回避しないこと」です。いわゆる、パニック発作が起こらない様に「大丈夫…大丈夫…」と不安を抑えようとせずに、あるがままの状態で実施することが大切です。
暴露療法の目的は「実際の不安や恐怖を体験すること」です。このようにしっかりと体験できた事が後の改善につながります。
暴露療法の実践中では多かれ少なかれ不安症状やパニック発作などが起きたと思いますが、これらの症状が実践開始から終わりまでで、どの様に変化したのかを振り返ってください。一般的なケースでは、不安症状が最初から最後まで強い状態のままである事はありません。
パニック障害の症状でもご説明した通り、パニック症状の特徴は10分程度でピークに達し、その後ゆるやかに落ち着き始め、長くても1時間程度で治まります。この通り、実践した暴露療法でも同じような結果が得られたのではないでしょうか?
この「パニック症状にはピークがあり、時間が経つと治まる」という体験し確認できれば、暴露療法はとてもうまくいったと言えます。
先述したとおり、暴露療法は比較的不安要素が低い場面から始め、徐々に不安度の高い場面・環境を試していきます。そのような過程の中で「不安症状がピークに達した状況でも自然と対処できる、乗り越えられる」ようになれば暴露療法の達成と言えるでしょう。
この状態まで出来る様になれば、パニック障害以前の元の生活を送る事ができます。
しかし、疑問となるのは「達成基準には個人差がある」という事です。暴露療法でパニック障害を克服するといっても、パニック症状が全く出ない状態を達成とするか、若しくはパニック症状は多少出るが生活に支障が無い範囲で十分に乗り越えられる状態を達成とするかという事です。
暴露療法を効果的に進めるために…
暴露療法はやみくもに実践しても期待する効果は得られません。意を決して、苦手な場所・場面に挑むのですから、効果的な暴露療法ができるようにポイントを解説します。
暴露療法をしっかりと理解する
暴露療法を始めた初期に経験する事ですが、やはりパニック症状が想像される環境にあえて身を投じるというのは、ともて大きな不安や恐怖をともないますので、パニック症状が悪化したような錯覚に陥る場合があります。
しかし、暴露療法というのは敢えて不安を体験し、その不安を避けずに(回避せずに)その症状や感情に立ち向かい、不安を感じたとしてもそれを乗り越え、それでも正常でいられることを実感する事で不安症状を克服していく治療法ですから、不安を感じること自体は当たり前の事です。
回避行動をしない
暴露療法では行動回避をしてはいけません。これは先述したとおり、「あるがままの自分」で体験を行わなければならないからです。ですから、パニック症状を少しでも回避しそうな行動、例えば、気分を落ち着けるように構えたり、ミントのタブレットを食したり、お酒を飲んでみたりという事はしてはいけません。
暴露療法とパニック障害のまとめ
以上、パニック障害における暴露療法のやり方を解説してきました。医師や臨床心理士、カウンセラー等と治療を進めていく中でパニック障害を克服する為のひとつの治療法として、この暴露療法を行う事になりますが、実際の「暴露」にあたっては、これら医師などの引率はなく、あなた一人で行わなければなりません。
もちろん、ここで解説してきた事は医師などから同じように説明を受けることになりますが、暴露療法を間違った手順で行ってしまうとかえって恐怖や不安を増やしてしまう事になりかねませんので、しっかりと学んだ上で暴露療法を行なってください。
それでは本編のまとめです。
暴露療法は不安や恐怖に感じている事を敢えて体験する治療法
- 暴露療法を行う事でパニック発作への恐怖心を少しずつ減らすことが可能
- 暴露療法を行う時は回避行動を行わない
- 暴露療法はまずは簡単な環境からはじめる事が望ましい
- パニック発作はとても短い時間で治まる事を認識することが重要