園芸療法がパニック障害やうつ病の改善に効果的



心と体の健康を維持するために、アメリカやヨーロッパでは「園芸療法」という治療法が存在します。医療や福祉の現場で積極的に取り入れられ、園芸と福祉や医療の専門知識をもった「園芸療法士」が、精神的・身体的に不安定な人たちのリハビリを行っています。

園芸療法のやり方は特別ではありません。自宅の庭やベランダで行う家庭菜園や草花を育てる事を通じて、太陽の光を浴び、土に触れ、緑を見ることによって心身がストレスから解放され治癒されていくのです。

この園芸療法は社会福祉の観点のみならず、パニック障害うつ病といった精神疾患の改善に一定の効果があることがわかっていますので、家庭菜園や農業に興味のある方は是非取り入れてみましょう。

ここでは、園芸療法についてその効果や詳細について解説します。

 

園芸療法の歴史

第2次世界大戦園芸療法は1950年代にアメリカや北欧を中心に発展してきました。

アメリカでは第二次大戦後の退役軍人病院で後傷痍軍人の社会復帰を目的とした作業療法として確立され、ヨーロッパでは精神疾患の改善と社会復帰を目的に活用されてきました。

日本へ本格的に広まったのは1990年代であり、アメリカで園芸療法を学んだ人たちにより普及され、近年ではこの治療法を取り入れる場面が増加傾向にあります。例えば、精神科領域では2000年代に60%以上の施設で園芸療法が取り入れられています。

 

園芸療法とは?

園芸療法園芸療法とは、草木・花・野菜などを育てる事を通じて身体的・精神的・社会的に回復・改善を狙う治療法です。

園芸療法は様々な目的で使われますので特定の効果だけではありません。

例えば、高齢者施設であるデイサービスに通う高齢者のリハビリテーションでは、園芸を通じて運動不足の解消や社会性の維持、収穫を通じた”生の喜び”などを狙います。また、小学校などでの野菜の栽培などでは仲間で育て収穫する事での社会性の習得や植物に触れる事による感性の向上を狙います。

一方、精神疾患の観点ではうつ病やパニック障害といった精神的ダメージからくる障害等にも改善の効果があるとされ、治療の一環として園芸療法を取り入れる病院も増えてきています。

園芸療法が必要となる背景

現在の日本は少子高齢化社会を迎え、更には医療費の負担増、そしてストレス社会における心の病(心身症・うつ病・PTSD・ひきこもり・学習障害・不安障害…パニック障害など)の増加などの社会的背景により、園芸療法は医療技術の代替として期待されています。

 

園芸療法の実績

  • 特別養護老人ホーム
  • 有料老人ホーム(介護型)
  • 介護老人保健施設
  • デイケアセンター
  • 知的障害者施設
  • 病院のリハビリテーションや精神科・小児科(ぜんそくなど)
  • 病院の屋上庭園
  • アルコール依存症者更生施設
  • 震災復興住宅
  • ユニバーサルデザインの公園
  • コミュニティガーデン
  • 特別支援学校
  • 小規模作業所

この他にも様々な施設で園芸療法は取り入れられています。

 

園芸療法の精神疾患への効果

園芸療法はパニック障害やうつ病に代表される精神疾患の改善効果が認められています。メディアに取り上げられた例としては、芸能人の高木美保さんが農業を通じてパニック障害を克服したという話も記憶に新しいところです。

園芸療法の効果は、植物に触れることによるヒーリング効果のみならず、園芸というスタイルがもたらす恩恵も多大にあります。

太陽の光を浴びることによる効果

太陽の光を浴びる 園芸療法

園芸は基本的に屋外で行われますので、晴れた日には体いっぱいに太陽の光を浴びることができます。

これはパニック障害やうつ病にはとても効果的であり、太陽の光をあびることでセロトニンの分泌が促進され、気持ちに落ち着きや安心を与えてくれます

この脳内物質であるセロトニンはパニック障害やうつ病に疾患されている方であれば聞いたことがあるかもしれませんが、これらの精神疾患の基本的な治療法は抗うつ薬の一種であるSSRIという薬を服用して、脳内のセロトニン量を増やす治療を行います。

太陽の光を浴びる事はセロトニンの分泌を促進するわけですから、パニック障害やうつ病の改善に非常に効果的なのです

また、太陽の光をあびることによって自分の体がしっかり目覚め、それを体が脳に伝えるため、自宅療養中などでも規則正しい生活を送ることにつながっていきます。自宅で家庭菜園などの園芸が出来なくても、一日一回15分ほど外で太陽の光を浴びるだけでも効果がありますので、ぜひ行ってみる事をおすすめします。

土に触れることによる効果

土に触れる 園芸療法土の中には常在菌というものが存在します。

その一種には、脳内物質セロトニンの分泌や働きを活発にしてくれるとても良い菌がいることが立証されています。そして免疫力を活性化し、幸福感を感じさせて物事をポジティブに考えられるよう促してくれます。

土にふれたことによって自然な心理状態を導き出し、表現できない心の奥にある感情を引き出す効果があると考えられています。

緑をみることによる効果

緑を見る 園芸療法自然の緑を見ることで、α波(あるふぁーは)と呼ばれる「気持ちがリラックスした時に出る脳波」がでて、血圧を下げ、筋肉を緩ませ、心拍数をさげます。不思議なことに造花の緑ではあまり効果は期待できません。

色彩心理の効果というものがあり、意欲の向上・気分の高まり・沈静・ゆとりなどの感情や行動に顕在・潜在意識の量レベルで思考に作用するとされています。

 

まとめ – 園芸療法をはじめませんか?

いかがでしたでしょうか?

園芸療法は様々な医療現場に取り入れられており、パニック障害やうつ病などの精神疾患にも効果がある事を理解して頂けたかと思います。

日本では歴史の浅い園芸療法ですから、まだまだ認知度は低いかもしれませんが、高齢化・心の病・ストレスが取り巻く社会環境を背景に医療技術の代替として活躍する場面は多くなりそうです。

現状では高齢者のリハビリテーションに積極的に活用されている治療法ですが、例えば精神疾患(パニック障害などの不安障害・うつ病・心身症・PTSD・ひきこもり など)にお悩みの場合でも園芸療法をはじめてみてはいかがでしょうか?また、ご家族が一緒になって取り組む事ができれば、より一層の効果が期待できるでしょう。

園芸療法は専門で園芸療法士という資格が必要なほど高度な医療技術になりつつありますが、ご家庭での家庭菜園の一環として植物に触れるだけでも効果が期待されますので、ぜひ取り組んでみてください。

著:日本園芸療法普及協会 『園芸療法の資格と仕事の本―園芸療法テキスト-基礎編-』